先日7月7日に、高槻市の画家である故・中村孫四郎画伯(1925-1995)の絵画が、ご子息である中村滋延先生(作曲家・九州大学名誉教授)により當山に奉納されました。山主による孫四郎画伯の御回向と作品の奉納式が行われました。
奉納された絵画は、佛喜Ⅵ、根–地の二点です。
1980年代に制作された「佛喜Ⅵ」は仏像レリーフを用いて抽象的に仏教的な世界観を表し、晩年である1989年以降には抽象的なレリーフのみを用いて「根–地」を制作されています(詳しくは、http://nkmr1950.sakura.ne.jp/wp/2019/10/09/magoshiro/をご覧ください)。
作品は普段は開放していない祥雲閣の二階に設置する予定です。
特別な行事の際にご覧いただけます。
【佛喜Ⅵ】
美しい青、貼られた無数のレリーフ(仏龕※というそうです)が印象的な作品です。
滋延氏による説明書きには、
”図形の意味が不確かにしか認識できなくとも、その素材が仏像レリーフのミニチュアであることに気付くことで仏教的世界観を想像することが可能となる。(変容への意志–中村孫四郎の画家人生–)”
とありますが、その言葉の通り、まず目に入るのは、青と黒。
全体にシンプルな曲線を象った色の境界線です。
少し近づいてみると、実は一部が立体であることに気付きます。逆さに敷き詰められた小さな仏龕です。
一見わかりづらいモチーフを描いたこの作品を眺めていると、ゆたかな想像の世界に旅行するかのような気持ちになります。
【根–地】
ゴツゴツとした根っこが張り巡らされたような作品に、「一体何を表しているのだろう」と興味をそそられる作品です。
全体に黒く、根のようなレリーフが同じ大きさ切り取られ、ぎっしり詰め込まれているだけのように見えますが、なぜかその世界観に強烈に魅了されます。
表面の黒と金のグラデーションは、光を鈍く柔らかに反射し、なんとも言えない気品、高貴さを感じます。
レリーフの一つ一つも、途中でぷっつりと途切れている中途半端ものが寄せ集まっているようで、何か大きなものの大切なかけらが整理されているのではないか、と思わずにはいられません。
“晩年、1989年以降、仏像レリーフのミニチュアさえ使わなくなった。代わりに抽象的形象のレリーフのミニチュアを用い、極めてミニマルな造形に取り組むようになった。(変容への意志–中村孫四郎の画家人生–)”。
※龕(ガン)…説明には“龕とは仏像の入れ物のことで、東南アジアなどにおいては小さな仏像を集め並べるために寺院の壁などにつくられた窪みのことである。”と記載されています。