令和2年5月1日 発行の「妙乃見山」です。
是非ご覧ください。
一部ご紹介いたします。
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緊急事態宣言の発令を受けて、不要不急の外出を自粛する毎日。
一日中、人とお話をする機会もないというお年寄りもあるという。
人は他の人とのコミュニケーションをとることで、意欲が湧き、行動する気になり、心豊かに日々を送ることができるのだと思う。
孫が二歳を過ぎた頃のことだ。おしゃべりできるようになったので、電話でお話ししようということになった。
母親がお祖母ちゃんだよ、と孫に変わっても黙ったままだった。
受話器の向こうから聞こえてくるお祖母ちゃんの声を、不思議な顔で聞いているばかりだったという。
孫が三歳になった時、テレビ電話を通して話すことになった。
「あ、おばあちゃん。見てみて、絵描いたよ」
「元気にしてますか。あら上手に描いたわね」
「おばあちゃん、これ見てよ」
「おばあちゃん、これも」
自分で描いた絵を次々に見せてくる。
そればかりかその場で更に書き始める騒ぎになった。
片言しか言えないのに、顔が見えるといろいろと話をしてくれる。
電話からテレビ電話へとコミニケーションの姿が、時代と共に変わってきた。
私が子供の頃は、まさかこうも簡単にテレビ電話が実用化されるとは思いもしなかった。
普通の電話でさえも各家に普及はしていなかった。
仕事で使うため設置している家があるくらいだった。だから必要なときは、その家まで借りに行ったものである。
小学校に入った頃、町内に農業用の有線が引かれ、その線を使って電話機が設置された。
家に電話があるのはいいものだと思った。
話がしたいとき、話をしたい人にいつでもお話しすることができる。
人とのつながりが電話回線を通してたしかにあると実感した。
自粛生活を余儀なくされる今だが嘆くことはない。
私たちにはいつも回線を開いて下さっている仏さまがいる。
こんな時こそ、ゆっくり仏さまとお話ししてはいかがでしょうか。
(『電話』/詠裡庵)
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